社会福祉施設における労働災害の特徴とその予防策
社会福祉施設(児童福祉、老人福祉・介護事業、障害福祉)における労働災害発生件数が年々増え続けております。2017年は計8,738件の労働災害が発生しており、過去最多を記録しました。
(参考:https://www.jisha.or.jp/info/bunsekidata/pdf/13021.pdf)
社会福祉施設における労働災害には下記のような特徴があります。
1)事故の型別では「動作の反動・無理な動作」による負傷(腰痛等)が最も多い
2)被災した労働者を年齢別に分けると、7割以上が40歳以上の中高齢者である
3)その事業所の規模が小さいほど、事故が起こりやすい
これは
・他業種から転職をした、いわゆる「業界経験が浅い労働者」が多く、正しい姿勢での介助作業が守られていない。
・誤った介助姿勢を正す教育や注意指導・改善できる職場環境が整っていない。
・小規模であればあるほど、安全衛生に関する担当者を設けることが難しく安全管理が脆弱である。
といったことが背景にあると考えられます。
このような状況を踏まえ、会社側ができる予防策としては下記のような取り組みが考えられます。
■介助姿勢に関する定期的な教育の実施
イラスト付きのマニュアルを活用したり、先輩社員が正しい介助姿勢を実際に行ってみせるなど、正しい作業イメージを持てるような内容が理想的です。
また、一回限りの教育ではなく、定期的な教育を行うことで効果が高まります。
■作業標準書の作成
その利用者さんの状態や介助の際の留意点などを予め個別にまとめておき、負担の大きな作業が生じないよう事前に把握をしておきます。
足腰の可動領域や身長・体重を踏まえ、単独での作業が困難だと感じたら、多人数で介助を行う、といった対策が立てられるようになります。
■福祉用具の活用
リフトやスライディングシート等を積極的に活用し、人力での作業を極力控えることで身体的な負担軽減を図ります。
前述の作業標準書に福祉用具の利用を盛り込んでおくのもよいでしょう。
いずれも、やろうと思えば明日からすぐにでも取り組める内容です。
腰痛発症者が後を絶たない…、といったお悩みがございましたら、上記の予防策をご検討してみてください。
また、近年では、介護ロボットを活用して作業負担を軽減させよう、といった取り組みも進んできております。普及率はまだまだ高くはないようですが、数年先には人力作業が一切無い介助作業が当たり前になっているかもしれませんね。
(コンサルタント 岡本 亨)